コンテンツマーケティングは、ユーザーのニーズに合うコンテンツを提供し顧客を育成することを目的としたマーケティング手法です。
コンテンツマーケティングは住宅会社のマーケティングとしても効果的な手法で、近年ではコンテンツマーケティングに力を入れる住宅会社も増えてきています。
今回はコンテンツマーケティングについての基本から、住宅会社の成功事例まで詳しく解説します。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、ユーザーのニーズに対して価値のあるコンテンツを提供することで潜在顧客を見込み顧客に育成し、最終的には自社の商品やサービスを購入させることを目的としたマーケティング手法です。コンテンツマーケティングは購買意欲が高い顧客ではなく、購買ニーズが明確ではない潜在顧客が主なターゲットとなります。
コンテンツマーケティングでは、企業が発信するブログやSNSなどの情報を潜在顧客が見つけ、興味を持つところから始まります。その後、定期的に企業の発信を閲覧することで、その企業が提供している商品やサービスにも興味を持ち始め、最終的には購入するというプロセスをたどります。この流れからわかる通り、潜在顧客が最初にコンテンツに触れたタイミングから、購入に至るまでには時間がかかるマーケティング手法です。
また、コンテンツマーケティングはWeb上の自社サイトやブログ、SNSに加え、自社で発行しているフリーペーパーやパンフレットなどのオフラインツールも含めて戦略的に顧客とのコミュニケーションを取ることを指し、その利用ツールは多岐にわたります。
今回はコンテンツマーケティングの中でも、特に近年注目が高まっているWeb上のコンテンツマーケティングについて詳しく解説します。
コンテンツマーケティングが注目されている理由
コンテンツマーケティングは近年の消費行動の変化などから、特に力を入れる企業が増加しているマーケティング手法です。では、どのような理由でコンテンツマーケティングが注目されているかを詳しく見ていきましょう。
新たな消費行動「ZMOT」への変化
コンテンツマーケティングが注目されている大きな要因の一つに、消費行動の変化があります。
消費行動の変化をわかりやすく言い表したものは、Googleが2011年に提唱した「ZMOT理論」が代表的です。ZMOT理論とは「Zero Moment of Truth」の略称で、「顧客は店舗に来るなどのアクションを起こす前に、すでにインターネットで情報を収集し購入意思を決定している」という考え方です。
このZMOT理論にあるように、インターネット上の情報発信がネットショップなどWeb上で売り上げが確定するサービスだけではなく、実店舗での購入にも大きな影響を及ぼしているのが消費行動のリアルです。
これに対応するには、実店舗での購入を主軸としている企業でもインターネットでの情報発信が必要です。この課題に対応できるマーケティング手法として、コンテンツマーケティングは近年注目を集めています。
プッシュ型マーケティングがネガティブに受け取られる時代に
ZMOT理論に加えて、従来の広告のようなプッシュ型マーケティングと呼ばれるマーケティング手法がネガティブな印象を持たれる時代の流れも後押ししています。
これは、日常的にテレビCMや新聞広告、メールマガジンなど多くのプッシュ型マーケティングに触れるうちに、ユーザーが広告そのものに嫌気がさしてしまったことが原因です。
現在では広告というだけで「押し売りされている印象」というイメージがついてしまい、その内容をまともに見てもらえない場合があります。
コンテンツマーケティングはプッシュ型マーケティングではなく、ユーザーが自らニーズに合うコンテンツを収集するプル型マーケティングのため、プッシュ型マーケティングに代わる有力なマーケティング手法として注目を集めています。
Googleアルゴリズムの評価軸の変化
コンテンツマーケティングは2000年頃にアメリカで生まれた、マーケティング手法ですが近年はインターネットの普及によりその影響力が高まっています。
インターネット上の発信にコンテンツマーケティングが強く影響するようになったのは、Googleアルゴリズムの評価軸が「量」ではなく「質」重視に変化したことも理由の一つです。
Googleの過去のアルゴリズムでは、検索され得るキーワードをコンテンツ本文にできるだけ多く記載しておくことが、検索結果の上位に上がりやすい評価基準の一つでした。しかし、近年のアップデートによりアルゴリズムの評価軸が大きく変化し、より「コンテンツがユーザーにとって有益であり高品質なものか」を見られるようになりました。
そのため、自然検索結果の上位に表示させるためには、必然的にコンテンツマーケティングの考え方を取り入れる必要性が出てきました。
コンテンツマーケティングを実施するメリット
コンテンツマーケティングを実施すると、自社で運営しているコンテンツを軸として顧客の集客につながります。
結果として自社で運営しているコンテンツの価値が高まるため、最終的には広告集客に頼らずに十分な集客を見込めるツールになる可能性があります。
ここではコンテンツマーケティングを実施するメリットについてより細かく解説します。
広告よりも費用対効果が高い集客が期待できる
コンテンツマーケティングは従来の掛け捨ての広告と異なりコンテンツ自体が資産として蓄積されるため、一度発信したコンテンツはその情報価値が失われない限り集客が見込めます。
結果として、発信したコンテンツは一度作成費用をかけた後は自動で集客をしてくれる有力な集客ツールとなる可能性があります。
広告では多くの集客を行うためにその分費用をかける必要がありますが、コンテンツマーケティングの場合は長期的な効果を期待できることから、良質なコンテンツを作れば広告よりも費用対効果が高くなることが期待できます。
顧客ロイヤリティが高まる
コンテンツマーケティングでは自社で発信する情報ツールを通じて、企業の商品に対する想いやこだわりをユーザーに伝えることができます。
そのため、ユーザーは企業のことをより身近に感じられ、好意度(ロイヤリティ)が高まります。
顧客ロイヤリティが高まると、実際に購入を検討する際、競合他社商品との比較検討を行わずに自社商品を選んでもらえるという効果を得られます。
コンテンツを資産として長期的に活用できる
特にWeb上に発信したコンテンツは、自社で掲載を取り下げない限りインターネット上に存在する「資産」になります。
そのため、品質の高いコンテンツを発信し続けることで、特定のジャンルに精通している権威のあるサイトとして評価が高まります。
さらに、ユーザーが訪問した際にも豊富なコンテンツがあることは安心感を与えたり、商品理解を高められるチャンスにもつながります。
このように、一度作成したコンテンツが資産として長期的に効果を発揮する点もコンテンツマーケティングのメリットの一つです。
コンテンツマーケティングを実施するデメリット
コンテンツマーケティングを実践する際に押さえておきたいデメリットは2つです。
一つ目は、ユーザーのニーズを満たす良質なコンテンツを継続的に発信し続けることが求められる点です。継続的に良質なコンテンツの発信や古いコンテンツの更新をし続けなければ、それぞれのコンテンツ自体の評価はもちろん、コンテンツ同士の相乗効果や提供する情報の信憑性が下がり、集客効果が見込めない懸念が発生します。
二つ目は、集客などのマーケティング効果が出るのに時間がかかる点です。コンテンツマーケティングは基本的にニーズが顕在化していない顧客に対してアプローチするため、顧客のニーズが顕在化し購入に至るまでには半年〜1年ほどの時間がかかると言われています。
Web上での情報発信の場合は、サイト自体に検索エンジンからの適切な評価がつくまでにも半年〜1年ほどの時間がかかるケースが多いです。コンテンツマーケティングを実践するためには、社内で継続的な運用ができる体制作りと、効果を長期的な視点で見ることの理解をしてもらう必要があるでしょう。
コンテンツマーケティングの実施方法
コンテンツマーケティングの概要を理解したところで、具体的な実践方法について解説します。コンテンツマーケティングでは顧客のニーズをしっかりと把握することが何よりも大切ということを念頭に置きつつ、以下の手順に沿って実践してみましょう。
ペルソナ設定
ペルソナ設定とは、自社サービスのターゲット層の人物像をイメージする作業です。
例えば、自社サービスのメインターゲット層が「男性、30代、世帯年収1000万円以上」だった場合、このターゲットを「架空の個人」にまでイメージを具体化することがペルソナ設定です。
以下の表のように、左図がターゲット層である場合、ペルソナ設定は右図です。
このように架空の名前や趣味などをイメージして、「どんな人にコンテンツを届けたいか」を明確にすることで、コンテンツ自体の方向性や内容にブレが起きにくくなります。
カスタマージャーニーマップの作成
ペルソナ設定を行うことで、「どのような人物に」、「どのような情報を」発信すべきかが明確になります。ここからは、それらの情報を時間軸に当てはめて「どのようなツールを用い」、「どのように発信するか」を決める必要があります。
ここで役に立つのがカスタマージャーニーマップです。 カスタマージャーニーマップとは、顧客行動と購買意欲の度合いをあらかじめ想定して、自社で情報発信できるツールをどのように用いるべきかを設定する手法です。
顧客は初めて自社コンテンツに接した段階では、購買意欲がない潜在顧客である可能性が高いです。そのため、その後の顧客の行動や態度変容を「顧客の旅(カスタマージャーニー)」に置き換えて、予測し適切なタイミングで適切な情報に触れてもらえるよう、あらかじめコンテンツ施策を用意しておくことが大切です。
また各施策を適切なタイミングに設定した後、その施策での役割も決めておくと運用していくなかでの効果測定や改善を行いやすくなります。
目標設定
コンテンツマーケティングを行う上で必ず設定する必要があるのが、目標設定です。
目標設定ではまずコンテンツマーケティングにより最終的に得たい成果(KGI)を設定することが大切です。KGIのゴールは「商品の購入」や「リピーターの増加」などが例として挙げれられます。
このような最終目標を定めたら、カスタマージャーニーで設定した各施策ごとの役割に応じた目標(KPI)も忘れずに設定しましょう。KPIとは最終目標に到達する上での、中間地点に設定する中目標です。
例えばKGIのゴールが商品の購入の場合、KPIはKGIを達成するために「ECサイトへの遷移数の増加」や「SNSでのフォロワー増加」など実施する施策ごとの成果目標を定めるイメージです。
キーワード選定
キーワード選定とはコンテンツマーケティングの主題となるキーワードを選ぶ作業です。このキーワードは各施策の役割ごとに異なりますが、基本的にはキーワードはユーザーに検索されている回数が多いもので、自社の商品やサービスに紐づくものを選ぶといいでしょう。
ここでは、自社サイトでのコラムをコンテンツマーケティングの施策として実施する場合を例として考えましょう。このコラムの役割が「注文住宅について情報収集をしている新規顧客の集客」である場合、軸となるキーワードは「注文住宅」や「住宅会社」などが適切でしょう。このように軸となるキーワードを決めたら、その軸キーワードに関連し、より検索意図が具体的なキーワードを洗い出します。
例えば、「注文住宅」を軸にした場合は注文住宅の購入を検討しているユーザーに対してのコンテンツ発信になるため、「注文住宅 期間」や「注文住宅 流れ」などが適切なキーワード例になります。
このキーワード選定の作業は、検索エンジンがユーザーのために予測候補として提供しているサジェストキーワードを利用することなどで効率的に行うことができます。
コンテンツ作成
キーワードの選定ができたら、そのキーワードで検索するユーザーのニーズを満たすコンテンツを作成しましょう。
どのようなニーズを持ってユーザーが該当のキーワードを検索するかは、コンテンツ作成時点の検索結果の上位サイトの内容がヒントになります。
例えば、「注文住宅 土地探し」のキーワードの上位が「土地探しのやり方」などのコラムや解説記事が多い場合は、コラムなどでノウハウを解説するコンテンツが適切でしょう。
一方、「注文住宅 土地探し」の上位サイトが土地を販売している不動産の販売情報などの場合は、ノウハウを解説するコンテンツではなく、実際の土地情報を掲載するページをサイトに用意するという対策が適切です。
コンテンツ公開・配信
コンテンツを作成したら、そのコンテンツを自社サイトのコラムやメルマガなどでユーザーに届けます。
なお、今回はWebでの施策を中心に解説していますが、ダイレクトメールやパンフレットなどオフラインのツールを活用している場合はそれらのツールもコンテンツマーケティングに活用できます。
効果測定
コンテンツの公開・配信後は必ず各施策での効果測定を行いましょう。
効果測定を行う際は、「目標設定」の際に定めた各施策のKPIに対して達成しているかどうかが重要です。もし、KPIが未達の場合は課題点を洗い出し効果が改善するように施策内容を見直しましょう。
また、効果測定は定期的に行い改善を繰り返すことを意識しましょう。この作業をPDCAを回すと言いますが、PDCAを常に回すことで、施策が常にユーザーの最新のニーズを捉えた効果的な状態を維持できます。
効果を上げるコンテンツマーケティングの運用ポイント
コンテンツマーケティングではいくつかのポイントを押さえることで、効果をあげることができます。今回は特にインターネットを活用したコンテンツマーケティングの活用ポイントを解説します。
もし現在コンテンツマーケティングに取り組んでいるものの、効果が上がらないといった課題がある場合は、以下のポイントを意識して運用できているか見直してみるといいでしょう。
ロングテールキーワードを意識する
よりニーズが顕在化しているユーザーを集客したい場合はロングテールキーワードを意識してキーワードを選定しましょう。ロングテールキーワードとは「複数の単語を組み合わせたフレーズで検索されるキーワード」のことです。
対になる言葉は「ビッグキーワード」などがあります。 例えば、ビッグキーワードは「注文住宅」などの単一のキーワードを指します。このキーワードだけでは、ユーザーが注文住宅の何について調べているのか、具体的なニーズを把握するのは難しいでしょう。
一方ロングテールキーワードは「注文住宅 東京 相場」など複数のキーワードを組み合わせて検索されています。このキーワードであればユーザーが東京の注文住宅を建てる相場について調べている、という具体的なニーズがわかります。
このように、ロングテールキーワードの方がビッグキーワードに比べてユーザーのニーズが顕在化している場合が多く、集客に成功するとその後の来場予約などの最終成果にも繋げやすいでしょう。
文章の構造を整えてコンテンツを作成する
コンテンツの発信方法としてコラムなど「読み物」を作成する場合は、文章の構造を意識して執筆することを心がけましょう。
文章の構造とは、書いている文章の内容に一定のルールがあることです。このルールがあることで、読み手(ユーザー)にとってわかりやすい文章を作成できます。具体的には、一つの文章内で「結論→根拠→根拠の詳細説明」という順序で書くことを意識するといいでしょう。
例えば、「東京都内で注文住宅を安く建てたいなら、郊外に建てるべきだ」という趣旨を文章にする場合は以下のような構造になります。
東京都内で注文住宅を安く建てるなら、郊外に建てるべきだ(結論)
↓
東京都内は郊外の土地代が23区内に比べて安い(根拠)
↓
23区の土地価格の平均と、東京郊外の土地価格の平均を提示し、解説(根拠の詳細説明)
また、詳細説明を行う際は調査結果がある場合はその数値や図表を用いたり、具体例を出して解説することでよりわかりやすいコンテンツになります。
オウンドメディア・ペイドメディア・アーンドメディアをうまく連携させる
インターネット上のコンテンツマーケティングでは「オウンドメディア」、「ペイドメディア」、「アーンドメディア」の3つのツールをうまく連携させることで、効果が上がりやすくなります。
オウンドメディアとは、自社サイトなど自社で運営しているメディアです。ペイドメディアは他社のメディアに掲載料を支払って自社情報を掲載してもらうメディアです。アーンドメディアはSNSなど自社アカウントを作成して発信できるメディアです。
基本的にはオウンドメディアへの集客を軸にして、ペイドメディアとアーンドメディアをうまく活用する方法がおすすめです。
例えば、最新情報の更新のお知らせはSNS(アーンドメディア)を利用し、セミナーなどの告知などはペイドメディアを利用して集客力をアップさせるなどです。
ハウスメーカー・工務店のコンテンツマーケティング成功事例
「ライフデザイン・カバヤ株式会社」様では、当初Webマーケティングの重要性は理解しているものの、人員不足や知見不足が理由で本格的なWebマーケティングの運用ができずにいました。
そこでまずは住宅会社に特化したWebマーケティング会社である当社と連携し、オウンドメディア「住まいづくりコラム」の内容改善を実施しました。住まいづくりコラムでは、コンテンツマーケティングの基本を押さえたコラムを作成することで、オウンドメディアからの新規顧客流入を狙いました。
その結果、SEO対策を行った記事の検索順位が大幅に向上し、オウンドサイトをランディングページとした自社サイトへのユーザー訪問が劇的に増加しました。これに加えてイベントページや展示場予約受付ページなどの申し込みフォームの導線を改善したことで、2020年度のWeb予約数が前年比約260%の増加を実現しています。
この事例について詳しくはこちら
▶コロナ禍の住宅業界においてWeb予約数260%増加!大躍進を遂げたハウスメーカー様成功事例
住宅会社のコンテンツマーケティング運用はFREEDOM X株式会社のマーケティング室へお任せください
インターネットで情報収集を行うことが主流となっている現代では、住宅の購入などの情報もWeb上にある内容である程度の意思決定がなされていると考えるべきです。
そのため、ハウスメーカーや工務店が新規顧客を獲得するためにはコンテンツマーケティングは重要な手法の一つと言えるでしょう。
私たちFREEDOM X株式会社のマーケティング室は、年間棟数約400棟の設計事務所であるフリーダムアーキテクツから独立し、住宅・不動産業界専門のWebマーケティング支援を行っています。
コンテンツマーケティングの立ち上げや運営方針についてお悩みがある場合はぜひ一度FREEDOM X株式会社のマーケティング室へご相談ください。